令和の苦言愚言(20)【読書ノート】「国土学」が解き明かす日本の再興(大石久和・著)
今回取り上げる本は、『「国土学」が解き明かす日本の再興-紛争死史観と災害死史観の視点から』、国土学総合研究所長の大石久和先生の最新の著作です。
大石先生には、5月21日開催の(一社)日本補償コンサルタント協会関東支部の第45回通常総会でご講演をお願いしていましたが、東京都の緊急事態宣言が(個人的には宣言が必要かどうか疑問ですが)5月末時まで延長されたことから、急遽中止となりました。(総会自体は書面評決が多数ではありましたが予定通り開催しました。)
ネタバレになるのであまり詳しくは記しませんが、その中の一節から「日本国土にあるほとんどすべてのものは、日本人が長年にわたってつくり上げてきたものである。(中略)この国土を財政が厳しいからとか理屈をつけて荒廃させていくことはできない。先輩たちが貧しい時代に手入れをしてくれたこの国土を、寸土たりとも荒廃させることなく次の世代に引き継ぐ責任がわれわれにはある。荒廃させる自由などがわれわれ現代人にあるわけがない」(第1章から抜粋)。
これは私たちがこの国土のうえで暮らしていくうえで常に考えておくべきことです。
ただ、この本の本質はそういう話ではなくて、日本という国は特異な国であるということ。
それは、日本人がどのような国土のうえでどのような経験をしてきたのかに関わっていると先生は述べています。特に、愛する者の死に直面した時の、極限の感情が大きく影響しているのではないか、と。
そのほか様々な視点から、島国日本とユーラシア大陸とでは、異なる「感覚」がある、とされています。
なかでも、「人為観」と大石先生は呼んでいますが、「自然が変えるのか」「人が変えるのか」の違いは大きいとしています。
だからと言って、変えられない政治、変わらない国民感情と、嘆いたり諦めていてはこの厳しい国際競争(貿易競争ではない)で生き残り、この国土のうえで豊かな生活、安全な生活を達成することはできない、気づいて、変えていくことが求められている、そんなことを感じた1冊でした。